フォーアイディールジャパン株式会社では、イノベーション・エコシステムの社会実装の一環として社会課題解決型スタートアップと全国の熱い自治体職員との出会いの場「Monthly Pitch 7minutes」をボランタリに開催しています。
その特別イベントとして年に一度の座談会を開催し、Connect!ランキング上位の自治体職員の皆さんと自治体との事業連携の在り方について議論し「事業連携成功の5ヶ条」をとりまとめています。
2024年4月に第25回Monthly Pitch 「7minutes」特別イベント~続!自治体との事業連携新5ヶ条~を開催し、新5ヶ条(2024年度版)を作成しました。併せて、自治体との連携を考える際に、知っておくべき基本事項を整理しています。
Special Thanks to
宮浦 敬紀 (福岡県 北九州市)、栗栖 真一 (広島県 東広島市)、武田 卓 (兵庫県 神戸市)、弘中 秀治 (山口県 宇部市)、安川 廉亮 (大阪府 大阪産業局)順不同
当日のyoutubeライブラリはこちら
written by MICHIKO SUGIHARA
1.自治体との事業連携成功の新「5ヶ条」
基本心得
協業に向かう最初の一歩は「つながり」や「共感」であり、改めてコミュニケーションのベースとなる部分が重要である点を確認し、自治体職員とスタートアップ両者共通の基本心得としました。
自治体の皆さんの多くは多忙な業務の中で今すぐ何かの成果に繋がりにくいものは話を聞くことすらためらってしまうのですが、登壇頂いた自治体の皆さんは「まずは話してみるという姿勢が目先ではなく将来につながる」という意識を持っていることが分かりました。
我々運営者も自戒の念も込めて「人間の想像力は低い」という事を理解したほうが良いと感じています。まずは会って話を聞いてみない事には何が待っているか分かりません。
また、折角会ったとして、相手は何を聞きたいか?自分の言動を相手がどう受け止めるか?そんな簡単な事が想像できない人によるポジショントークや無知ゆえの無礼な言動をお見掛けしますが、想像力の低い者同士が理解し合うためにもお互いに「リスペクト」を持って接するのは、できて当然のことです。
5ヶ条は上図表のとおりです。それぞれのポイントだけ説明しておきます。
其の1
自治体職員は2年で異動するケースが多く、初めての業務に就くことになります。自治体職員なのだから何でも知っていて当たり前ではありません。分かりやすい言葉でしっかり伝えることはもちろんですが、分からない事を分からないと素直に言い合える人間関係・信頼関係の構築が重要だという見解で一致しました。
其の2
互いに忖度や遠慮があると確認すべきことを確認しないまま時間が経過していくケースも。特に予算は重要なポイントですが最初に話すことは少ないかもしれません。自分の当たり前が相手にとっての当たり前とは限りません。「相場観」や「松竹梅」のオプションを示して欲しい、という意見が出ました。
其の3
FIJでは自治体と新たな事業を起こそうと思ったら2年は見ておくべき、とお伝えしています。自治体への導入・新たな事業の実施に向かうプロセス・期間を理解しておく必要があります。
其の4
当然ですが予算化のプロセス・時期も理解しておきましょう。すべてが揃っていても最後まで何が起こるか分かりません。
其の5
最後に契約の段階になって、入札参加資格を持っていなかった!という事のないように。契約方法についても理解しておくとより効率的に話を進められると思います。
2.事業化までのプロセス・期間
もし、新たなサービスの導入や事業を検討する場合には、まずPoCを行うなど導入に際しての評価を行うことになります。その後、評価が得られれば予算化に向けて調整が始まり、予算化が実現して公募・入札という流れになります。
よって、「自治体との事業連携を考えるならば2年はかかると思っていた方が良い」とお伝えしています。民間からのマネタイズと並行して自治体連携を進めるなど、戦略を持って取り組むことをお勧めします。
我々も1年がかりでPoCを行ってきたプログラムについて、最終的に予算が通らず実現できなかったこともあります。
3.自治体予算策定の流れ
事業化までのプロセスにも関わることですが、そもそも自治体の予算策定の流れをご存知ですか。
翌年度の当初予算は10月頃までに予算要求を行ったものから決定されます。6~7月に予算編成方針が決定され、方針に基づいて各部予算要求に向け動きます。7~9月の時期はネタを探しているので、話を持っていくタイミングとしては良いと思います。当初予算は2月に決まりますが、3月・6月・9月・12月のタイミングで補正予算が組まれますのでそこに上げることも可能です(自治体によって議会の時期に多少のずれがあります)。
4.自治体との契約方法
最後に契約方法について確認しておきます。「一般競争入札」を経ずに任意で決定した相手と契約を行う「随意契約」が難しくなってきてはいますが、要件を満たせば不可能ではありません。
図には記載がありませんが、官公庁や自治体の入札には「入札参加資格」が必要です。参加資格証の取得には必要書類の提出や申請から承認までの時間がかかりますので余裕を持って早めに準備しましょう。
5.イノベーション・エコシステム形成に向けて
前職で国の研究開発型補助金事業の事務局を担当していた際、補助金を獲得したけれども、実証フィールドや協力企業の開拓に苦戦し、事業が数カ月、半年と遅れていくスタートアップを目の当たりにしました。
「新しい技術や事業に挑戦する人をもっと応援する社会でありたい」と、社会課題解決型のスタートアップと全国の熱い自治体職員との出会いの場として「Monthly Pitch 7minutes」を企画し、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(SCI-J)に協力頂いてボランタリに開催しています。
日本政府によるスタートアップ5ヶ年計画がスタートして2年、日本全国でスタートアップ支援が盛んにおこなわれるようになり、スタートアップ村に新しい人達がどんどん入ってくるようになりました。イノベーション・エコシステムとは、多様なステークホルダーによるダイナミックな連携によりイノベーションが創出され続ける状態であり、そのベースには目指す社会への共感や互いのリスペクトがあると考えています。
そんなイノベーション・エコシステムを担う仲間を募集しております。共感頂ける方々のご参画をお待ちしております。