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2026.09.23

#FIJ共創フレームワーク No.2 「成果につなげるKPI設定〜ロジックモデルで考える5つのステップ〜」(自治体・企業向け)

1. はじめに

私たちフォーアイディールジャパン株式会社(FIJ)はスタートアップとともに社会のあるべき姿を描き社会実装する新しいシンクタンク=アクトタンクを目指し、産・官・学・民4者のさまざまなコミュニティと繋がり共創の場をデザインしています。
具体的には、東京都のスタートアップ支援拠点「Tokyo Innovation Base(TIB)」と連携した「TIBオープンイノベーション導入・促進プログラム」のコース運営や北九州市内企業と環境系スタートアップの共創プログラム「エコテックキャンプ」等に携わってきました。

共創フレームワークNo.1において「KPI設定の重要性についてはまた別の機会に書きます」としておりました。自治体や企業の方々とお話しする中で、繰り返しお伝えしていることの1つに、Key performance indicator(KPI:重要業績評価指標)設定の重要性があります。スタートアップ支援やオープンイノベーションの取組において、「イベントの開催回数」や「参加者数」をKPIに設定している方も多いと思います。一見すると分かりやすく、評価もしやすいように思われますが、取組の「質」を静かに、しかし確実に損なっていくことになります。今回は、こうした事態を防ぐためにお伝えしている「KPI設定5つのステップ」を整理したいと思います。

2. なぜアウトプットKPIだけでは成果に届かないのか

イベント回数や参加者数は事業者が実施した取組そのもの(=アウトプット)を指します。一方で、本来その取組が目指すべきはその取組によって被支援者や社会にどんな変化が起きたか(=アウトカム)です。

この2つは性質が異なります。アウトプットは自分たちでコントロールが可能なもので、実施したかどうかで評価ができます。一方、アウトカムは自分たちでコントロールができるものではありません。測りやすいのは圧倒的にアウトプットの方なのでアウトプットだけがKPIになりやすいのですが、アウトプットの達成がアウトカムの達成を保証するわけではありません。

3.  KPI設定5つのステップ:ロジックモデルを逆算で組み立てる

「KPI」はどのように設定していくのか?

この問題を防ぐために使えるのが「ロジックモデル」です。ロジックモデルは、投入資源(インプット)→取組(アウトプット)→短期的な変化(短期アウトカム)→中長期的な変化(中長期アウトカム)という流れで事業を構造化する考え方ですが、重要なのは組み立てる「順序」にあります。多くの現場ではインプットやアウトプットから発想が始まってしまうこともありますが、本来はビジョンからの逆算(バックキャスティング)で考えるべきものになります。

Step1:ビジョン(将来のあるべき姿)を定義する

まず、事業を通じて実現したい将来のあるべき姿を言語化しましょう。「子育て・市民活動・文化活動が活発で憧れのまちになる」といった、5年後・10年後に地域がどうなっていてほしいか?という姿です。ここが曖昧なままだと、この先のすべてのステップの解像度が下がります。企業の場合についてはNo.1をご覧ください。

Step2:中長期アウトカムを設定する

ビジョンが達成された状態で、誰がどうなっているか、どんな人が増えているかを定量・定性の両面で言語化します。「子育て世代の移住が増える」「市民活動の自主財源比率が上がる」など、ビジョンを構成する要素に分解していきます。

Step3:短期アウトカムを設定する

中長期アウトカムに至る途中で、まず何が変化していれば良いのかを設定します。例えば「市民活動への満足度」「新規参加者の増加」など、事業実施から比較的早いタイミングで観測できる変化を置いてみましょう。

Step4:アウトプットを設計する

短期アウトカムを生み出すために、どんな取組が必要かを設計します。イベントの開催、セミナー、ワークショップといった具体的な活動がここに当たります。ここで初めて「イベントを何回開催するか」という発想が出てきます。

Step5:必要なインプットを見積もる

最後に、そのアウトプットを実現するために必要な投入資源(予算・人員・施設など)を見積もります。この順序を守ることが重要です。インプットやアウトプットから発想を始めると、「予算内でできること」「実施しやすいこと」が優先され、本来のビジョン達成に向かう設計になりません。

4.システムの力学:KPIは現場の行動を規定する

なぜこの設計が重要なのか?それはKPIが、単なる測定のための道具ではなく、現場の行動を規定する「システムの力学」を持つからです。人や組織は、評価される指標に向かって最適化しようとします。これは自然な行動であり、担当者を責めすものではなく、問題は指標の設計側にあります。

イベント回数がKPIであれば、受託事業者は回数をこなすことに合理性を見出していきます。参加者数がKPIの場合、参加者の「量」を集めることに注力し、参加者が本当にその事業領域に関心とポテンシャルを持つ層かどうかといった「質」は二の次になっていきます。結果として、数字上の目標は達成されているのに、事業の本来の目的からは遠ざかっていくことになってしまいます。

私が好事例だと思うのは、某メガバンクのスタートアップ支援のKPIです。KPIを支援したスタートアップの「数」から「時価総額(企業価値合計)」に変更しました。数であれば、できるだけ多くのスタートアップに接点を持つことが合理的な行動になりますが時価総額がKPIになると、成長ポテンシャルの高いスタートアップを見極め、各社の事業成長に深くコミットすることが合理的な行動になります。同じ「KPIを設定する」という行為でありながら、指標の選び方一つで現場の行動原理がまったく違う方向を向くことになります。

5.インプットはコストではなく投資である

ここまでロジックモデルとシステムの力学について整理して来ましたが、もう1つ、KPI設定の土台として持っておきたい視点がインプットの捉え方です。

インプットは「コスト」として捉えられる方が多いと思います。予算をどれだけ使ったか?投入した人員がどれだけか?という発想です。しかし、インプットは本来「投資」として捉えるべきものです。この2つを分けるのは、インプットに対してアウトプットがどれだけ大きいかという関係性です。インプットがアウトプットを上回れば、それは単なるコストに過ぎません。反対に、インプットに対してアウトプットが上回っているとき、それは投資と見なされます。

投資とは、アウトプットを最大化することです。この視点を持つと、KPI設定の意味が変わって来ます。予算内で実施できることを積み上げるのではなく、限られたインプットからどれだけのアウトプットを、その先のアウトカムを引き出せるかを問うようになります。ロジックモデルで「ビジョンからの逆算」を型として持ち、この投資の視点を土台に置くことで、KPIは単なる管理指標ではなく、投資対効果を最大化するための設計図になります。

6.まとめ

当たり前のことなのですが、ビジョンは何か?求めるアウトカムは何なのか?を設定しましょう。正しいKPIの設定1つで、その取組が成果につながるか否かが変わります。思考を止めず、より良い社会を共に目指しましょう。

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