1. はじめに
私たちフォーアイディールジャパン株式会社(FIJ)はスタートアップとともに社会のあるべき姿を描き社会実装する新しいシンクタンク=アクトタンクを目指し、産・官・学・民4者のさまざまなコミュニティと繋がり共創の場をデザインしています。
具体的には、東京都のスタートアップ支援拠点「Tokyo Innovation Base(TIB)」と連携した「TIBオープンイノベーション導入・促進プログラム」のコース運営や北九州市内企業と環境系スタートアップの共創プログラム「エコテックキャンプ」等に携わってきました。
その中で常にお伝えすることの1つが「オープンイノベーションは手段です」という事です。では「目的」とはどのように決定すればよいのか?
※「オープンイノベーション」についてはこちらをご覧ください。
2. 「オープンイノベーション自体が目的化」する構造
なぜ手段が目的にすり替わるのか?いくつかの構造的な要因があると思っています。
1つは、経営層からの「オープンイノベーションをやれ」という号令が、そのまま現場のミッションになってしまうケース。号令を出した側の意図は本来「事業課題の解決」にあったはずが、現場に降りてくる頃には「連携すること」自体がゴールになっていたり、号令を出した側も目的が明確になっていない事もあります。
もう1つは、成果の可視化のしやすさ。参加社数や商談件数は数えやすく、報告資料に書きやすい一方で「その連携が事業にどれだけ寄与したか」は測定に時間がかかり成果も出しにくいことから、可視化しやすい指標がいつの間にか本来あるべき評価軸を上書きしてしまうことになります。(KPI設定の重要性についてはまた別の機会に書きます)

オープンイノベーションのオモテとウラ 出所:フォーアイディールジャパン株式会社作成
3. 目的を明確にするための5ステップ~自社の強み・弱みは整理できていますか?~
「目的」はどのように整理していくのか?
Step1:経営課題・事業課題を言語化する
まず、全社戦略を踏まえ、解決したい課題を自社の言葉で明確にする。「○○に代わる新規事業の柱が必要」「既存顧客の深堀りする新たなソリューションの開発」「営業部門のDXによるコスト削減」など、抽象度を上げすぎず、具体的な課題を言語化しましょう。
Step2:伸ばすべき自社の強みと保管すべき弱みを整理する
目的の設定と手段の選択を構造的に行うために、CROSS SWOT分析は本当に重要です。自社の強み(S)・弱み(W)と、外部環境の機会(O)・脅威(T)を掛け合わせ、4つの象限で戦略の方向性を整理します。CROSS SWOT分析を提案すると「そんな事をやっている暇はない」とか「そこはできています」という(スタートアップも含め)企業が居ますが、半年後に結局ここに立ち返る羽目になる事も少なくありません。

CROSS SWOT分析 出所:フォーアイディールジャパン株式会社作成
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S×O(強み×機会):自社の強みで機会を取りにいける領域。内製での対応が基本線になる。
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W×O(弱み×機会):機会はあるが自社の力だけでは届かない領域。ここがオープンイノベーションを検討すべき主戦場になる。
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S×T(強み×脅威):自社の強みで脅威を防ぐ領域。これも内製での対応が基本線になる。
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W×T(弱み×脅威):弱みと脅威が重なる領域。無理に手を広げず、防御や撤退を検討すべき領域。
こうして整理すると、「なぜ外部連携が必要なのか」を自社の戦略ポジションに基づいて説明できるようになり、Step3以降の精度を大きく左右します。
Step3:外部連携によって「何を得たいか」を定義する
自前での解決が困難、または時間的に非効率だと判断された場合、外部から何を得たいのかを具体的に定義します。技術なのか、人材なのか、スピードなのか、市場へのアクセスなのか?それを持っているのはどんなスタートアップなのか?組むべき相手がイメージできるようになります。
Step4:共創プラン仮説を立ててみる
組むべき相手がイメージできたところで、共創仮説をたてて行きます。先ずは、①あるべき姿・ビジョンと②理想と現状のGAP(課題)を明確にします。そのうえで、③課題解決に向けたソリューションを言語化します。大事なのは④活用可能なリソースです。「活用可能な」というのがポイントで、持っているだけで今すぐ使えないものはリソースに入りません。⑤得たいメリットとそのためにどんな役割を担うのかを言語化しておきます。この時点で④⑤を明確にしておくと「期待していたのと違った」といった認知バイアスを無くすことができます。以下のシートは当社FIJオリジナルの共創ゴール設計シートです。3枚ものですが、1枚目がこちらになります。

共創ゴール設計シート 出所:フォーアイディールジャパン株式会社作成
Step5:目的に紐づいたKPIを設定する
最後に、当初の経営課題・事業課題に対してどれだけ寄与したかを測るKPIを設定します。ここで有効なのが、インプット・アウトプット・アウトカムの3層で指標を分けて考えることです。
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インプット:投下した資源。予算、人員、稼働時間など。
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アウトプット:活動の結果として直接生まれるもの。提携件数、アクセラレータの実施回数、契約締結数など。数えやすく、報告資料にも書きやすい。
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アウトカム:その活動が事業課題にもたらした実質的な変化。新規事業の売上寄与、既存事業の競争力強化、技術獲得によるリードタイム短縮など。
2.で触れた「目的化」の正体は、多くの場合アウトプットをアウトカムと錯覚してしまうことです。提携件数はインプットを消費して生まれたアウトプットに過ぎず、それ自体は経営課題の解決になりません。KPIを設計する際は、アウトプット指標を進捗確認用として残しつつも、評価の軸は必ずアウトカムに置く。この順序を守ることが、Step1で言語化した課題に最後まで立ち返るための仕掛けになります。
4. まとめ
オープンイノベーションは手段です。目的によって、とるべき手段は異なります。場合によってはオープンイノベーションという手段が必ずしも最適解ではないこともありますので、先ずは目的の整理から。
ご案内
その1
本年度もTIBオープンイノベーション導入・促進プログラムの一環として「自社アセット分析によるグローバル事業共創コース」を運営し、現在参加企業を募集しています(9/17締切予定)。本プログラムでは、まさに目的の明確化という基礎からスタートアップの共創プラン作成という実践(Step1~Step4)までを約半年で仕上げていきます。宜しければエントリーお待ちしております。
その2
オープンイノベーションにこれから取り組みたい方々に、5つのステップと各ワークシート(CROSS SWOT分析、共創ゴール設計シート)の原本を提供します。ご希望の方はこちらからご登録をお願いします。